「選手練なんてない」「誰も練習に来ない日もある」地方からKIT連続参戦、村井俊太の柔術キャリア[前編]
「選手練なんてない」「誰も練習に来ない日もある」地方からKIT連続参戦、村井俊太の柔術キャリア[前編]
買取大吉 presents KIT9
昨今、国内柔術界において、勢いある黒帯一年生の一人として注目されているのが、富山市内にあるEvermoveの村井俊太だろう。
昨年からKITに連続参戦中の村井は、茶帯でダニーロ・ハマザキ(カルペディエム三田)や為房虎太郎(カルペディエム芦屋)と、黒帯となった今年は、2月のKIT8で平田孝士朗(カルペディエム自由が丘)と対戦。柔術界では先に名が売れたと言っていい彼らを相手に激闘を繰り広げ、自らの名をとどろかせ始めている。
では、村井俊太とは一体どんな選手なのか――?
富山で練習を積み、黒帯として歩み始めた村井に、そのキャリアを語ってもらうと、地方選手が勝つためのヒントや教訓、戦術の練り方など、後に続く選手たちにとって参考になるであろう話が満載だった。彼が持つ高い技術レベルの裏側にある"思考"にも触れることができた本インタビューは、前編・後編にわけて掲載していきたい。
――まずは柔術を始めたきっかけを教えてください。
村井:きっかけは何かやることが欲しかったからです(笑)
僕は兄の影響で幼稚園くらいから大学卒業までサッカーをやっていたんです。そうなると必然的にプロを目指すようになり、中学も高校も勉強は全くしないが、サッカーで進学していくという典型的なサッカーしかできない馬鹿の出来上がです。
結果的に4年生の最後に気合いの入り過ぎからの怪我の併せ技で気持ちの糸が切れてバーンアウトすることとなり、20年間のサッカー人生は幕は閉じ、そして手元に何も残りませんでした(笑)
――いやいや、何も残らないなんて(苦笑)
村井:大学卒業後は地元富山に帰り、家業の腰掛けをやって何もしない日々を2年ほど送りました。
競技引退後、最初の1年はやることがない日々を楽しでいたのですが、2年目からは逆に刺激のない日々に耐えられなくなり、誰も通らない山道を車で駆け降りたりする「1人イニシャルD」と命名したものをしたりして、恐怖や興奮などなんでも良いので刺激を求め出したくらい頭がおかしくなっていました(笑)
ある日、このままではいずれ事故で死ぬと思い、何か代わりに刺激が得られそうなことを始めようと思って近くの格闘技ジムに通ってみることにしました。
格闘技なんて刺激的に決まっているじゃないですか。なにより死にたくなかったから、今すぐ何かやることが欲しかったんです。
――格闘技ジムが始めるきっかけであれば、キックやMMAのクラスなどもあったと思います。その中で柔術を選んだ理由などはあるのでしょうか?
村井:前所属ジムも総合のジムだったのですが、僕は目的あったわけではないので最初はキックもMMAも柔術も全部のクラスに出ていました。
ただ、次第に元同門で同い年の当時茶帯だった現IGLOO所属の山中健也くんに技の実験モルモットとして目を付けられてしまい、柔術のクラス後から夜遅くや休館日にも呼び出されて、毎日ズタボロにされているうちに柔術だけをするようになっていきましたね。
――そんな時代があったのですね。村井選手は、柔術歴が5年強とのことでしたが、かなり短い期間で黒帯に辿り着いていますよね。
村井:黒帯取得期間は、今まで気にしたことがなかったんですが、最近周りに言われて自覚しました。柔道やレスリングなどの組み技出身者以外で、全くの0からスタートだとなおさら珍しいことかもしれないですね。
最初に習ったことは帯の結び方だったくらい、本当に何も知らないところからのスタートだったので(笑)
――現在はEvermoveでインストラクターもされていますが、始めた当初から選手志向だったわけではないんですよね?
村井:先の質問と重複してしまいますが、何かやることを探していただけなので最初から選手志向とかではなかったですね。
でもサッカー時代の名残りで、最初から週6とかで練習はしてましたね。
――村井選手は、これまでのKITで国内トップと言われるダニーロ選手、為房選手、平田選手らと互角以上に戦っています。普段は働いているとおっしゃっていますし、都心部ほど(サイズや実力が見合う)練習相手もいないのではないかと思います。地方で戦うにあたって、普段どのような工夫や練習スケジュール管理をされているのでしょうか?
村井:僕は朝の5時半に起床して、仕事前に1時間程プッシュアップや懸垂など基本的な運動をします。8時から仕事や残業をしたりして帰宅し、その後は自分のクラスの日は指導して、その中のスパーリング時間がようやく僕の練習って感じです。
クラス前後に空いてる人がいれば、体を借りて打ち込みをしたりします。本当はもっと練習したいのですが、競技志向は僕しかいないので、それを強要はできないですし(笑)
――競技志向者が少なかったり、そもそも練習相手が少ないというのも、地方のジムならではですよね。
村井:ただ、これは練習できている日で、今は減りましたが、誰も練習に来ない日がたまにあって仕方なくソロドリルを2時間して帰るなんて日もあります。
もちろん選手練なんてないので、スパーリングの時間は凄く重要です。不利な状態から始めたり、縛りを設けたりして、シチュエーションスパーのようにやっています。
――様々な工夫や努力で補っているわけですね。
村井:青帯後期くらいから、僕に柔術を教えてくれる人がいないので、教則や試合動画から技術や戦術を自身で解釈し、独学で自分の柔術を作りました。
グラップリング、レスリング、サンボ、MMAなどからも技術を取り入れてますね。こんな感じなんですが、田舎地方勢はみんな似た様なものだと思います。
[この項続く]
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