「選手練なんてない」「誰も練習に来ない日もある」地方からKIT連続参戦、村井俊太の柔術キャリア[後編]
買取大吉 presents KIT9
富山市内のEvermoveで活動する黒帯一年生・村井俊太は、昨年からKITに連続参戦。2月のKIT8では、黒帯トップの一角、平田孝士朗と対戦し、互角の勝負を繰り広げた。
そんな村井にこれまでの柔術キャリアを尋ねると、その言葉の端々には、地方選手が勝つためのヒントや教訓が散りばめられていた。村井俊太インタビュー後編をお届けしたい。
[インタビュー前編はコチラ]
――プロ錬もなく、練習相手が誰もいない日もある。それでも、村井さんのKITデビューとなったダニーロ戦では、試合前に「正直、負けない」という言葉がありました。こうした自信の根拠はどのあたりにあったのでしょうか?
村井:あの発言は半分は本気で、半分はハッタリです(笑)
だって、みんな僕が負けると思ってるから悔しいじゃないですか(笑)
――そうだったのですね。
村井:でも半分は本気ですよ。
ダニーロさん、虎太郎さん、孝士朗さんとスパーしたら多分ボコボコにされそうです。3人とも僕より選手としての能力が断然上なので。
でも試合となると話は別で、能力で劣ってもルール上で勝つことは可能だと思ってます。重要なのは、用意する手札と切るカードとタイミングで、それを間違えなければ、余程の実力差がない限り、試合のルールでは勝てると思っているので。
そして、その結果、ダニーロさんと孝士朗さんとの2戦でそれをミスしてちゃんと僕は負けたんです(笑)
――KITで戦った3試合は、どれも一進一退の好勝負を繰り広げています。KITで最も印象に残っている試合と、その理由を教えてください。
村井:ダニーロ戦ですかね。
実力、人気共に揃った国内スターのダニーロ・ハマザキがどんな格好良い勝ち方をするかをみんなで見る構図だったので、「おとなしく喰われるかよ」と静かに燃えていたのを覚えています。
そして、何より僕はKITにずっと出たかったんですよ。
KIT1~5まで全大会のチケットを、いずれ自分が出場するまで大会が存続してもらわないと困るという思いもあって買っていたので、大会に自分が出られることになって凄く嬉しかったのを覚えています。とにかくこの試合から僕の柔術が少し日の目を見始めたように思いますからね。
――おっしゃる通りですね。その後、為房選手に勝利し、今年2月のKIT8では、黒帯になって平田選手と対戦しました。削り合いのような展開になりましたが、ご自身ではどのような評価をお持ちでしょうか?
村井:平田さんとは実力差がありましたね。
技術は勿論ですが、動きの速さと鋭さが僕とは比べものにならなかったですね。
瞬間移動しているのかと思いましたよ(笑)
――そこまでですか?
村井:セコンドに橋本知之さんがいるのも嫌でしたね。この戦いには、いくつかの戦略を決めてきたんです。
1つはダニーロ戦でも使用したディープラッソーです。
やっぱり、平田さんは動きが早く瞬発力があるから僕は追いつけないんですよ。なので、まずラッソーを深く作ってアタックの幅を狭めたかったんです。ディープラッソーに拘ると攻撃の幅が減ってしまうので、相手も動きのあるアタックはしづらくなるんです。
平田さんはベースが高いので、ラッソーをしていない方の手の組み手が作りにくく、1試合を通して僕は良い攻撃を仕掛けられなかったので、今考えると早い段階で他のプランに変えるべきでしたね。
もう一つはガードリテンションの種類を、従来の足を効かせるタイプではなく、球体を意識したフレームで受けるタイプにしました。イメージで言うとファブリシオアンドレですかね(笑)
――体を丸めて、マットと背中の接地面積を小さくして...みたいなことですよね。
村井:平田さんは、今までの試合を見ると足を捌いてニーオンを経由してパスガードにいくことが多いので、お腹周りは開けたくなかったんです。平田さんのパスガード時の手のフレームが強く、両足を持たれて足を効かせてリテンションするとお腹周りが空いちゃいそうだと思ったので、動きを最小限にして、フレームと足の引き付けを意識したらガードに戻せましたね。(KITの)ルールにアドバンがないので、あれは悪くなかったんじゃないかと思ってます。
――トップも果敢にアタックしていると感じましたが。
村井:トップポジションでのプランは全部不発でしたし、これ以上話すと止まらなくなるので辞めておきます(笑)
ともかくこの戦いは僕自身の今の立ち位置も分かりましたし、良い経験値になりました。ただ、自己評価は低い40点と言ったところです。
――40点は低いですね(苦笑) 率直にKITのルールは好きですか?
村井:KITルールは好きですよ。ポイントがないが故にリスクを恐れない試合展開もできますし。それに僕は割とフィニッシュ率が高いので相性は悪くないんですよね。
――各連盟が主催する柔術大会の試合とは違いますか?
村井:自分でお金を出して出場する普段の大会は、勝つ事が1番大切なのでポジションを固めたり膠着が続いても勝つために必要なら是非やるべきです。
でも、KITはプロマッチなので沢山の仕掛けや展開を多く作り、初心者や柔術未経験の選手の家族などが見ても、つまらなくない試合運びを意識しないと駄目だと思ってます。
KITルールは、それを体現できるのでとても良いルールだなと個人的に思ってます。
――7月28日(日)にはKIT9の出場が予定されています。実現するしないに関わらず、KITルールで対戦したい相手はいますか?
村井:誰ですかね?
プロマッチなので、膠着が生まれそうな手堅い選手じゃなければ誰でも良いんですよね。それなら森戸(新士)さんや毛利部(慎佑)さんは胸をお借りしたい気持ちはありますね。
お二人共、黒帯になればいずれ戦ったりするのかなと青帯くらいに考えてましたので。今は少しずつライト級の勢力図も変わってきたように思えますが、それでもやはりこのお二人は滅茶苦茶強いですからね。
でも本当に僕は相手を選べる立場でもないので誰でもやりますよ。
――主催者に意向は伝わると思いますが、いずれその時はやってきそうですね。では、KITに限らず、選手としての目標はありますか?
村井:アダルト黒帯世界王者!!……とかではないんですよ(笑)
――違いましたか!
村井:現実的にそれを口にして良いだけの実力も練習量も覚悟もないですし、これを巻き返すには僕は歳をとりすぎています。
全日本優勝、アジア優勝、ムンジアル出場、ワールドマスター優勝が僕が口にしても良い最終ラインと、現実的で競技者として成し遂げたい目標ですね。
後はできるだけ長く、トップ前線でおじさんの割に結構強い厄介者として居座り、KIT20あたりで黒帯1年生のイケイケな若者の噛ませ犬として対戦を組まれ、「僕もうマスター3すよ。勘弁して下さいよ~」なんて言いながら試合してたら最高ですね。
――今日はありがとうございました。益々のご活躍を期待しております。
村井俊太出場決定!ライブ配信によるサブオンリーのブラジリアン柔術イベント
「買取大吉 presents KIT9」は2024年7月28日(日)に開催決定!!