キーナン・コーネリアス「アメリカン柔術はブラジリアン柔術より自由でカジュアルな感じ」
キーナン・コーネリアス「アメリカン柔術はブラジリアン柔術より自由でカジュアルな感じ」
Interview
いまも使い手が多い革新的なテクニックであるワームガードのクリエイターにしてアメリカ人柔術家の旗手でもあったキーナン・コーネリアス。
だが、現在の柔術シーンから忽然と姿を消し、会場でも姿を見なくなって久しいキーナンをサンディエゴにてキャッチ。
自身が創設したリージョンAJJにて寛いでる姿を見つけ、雑談がてら最近の近況を聞いた。
──おお、キーナン!まさかジムにいるとは思わなかったです。
キーナン:キンヤ!久しぶり。ここに来たのは初めてかい?
──そうです、初めてです。今回のサンディエゴツアーは旧友のジムを訪ねるというテーマであちこち行ってるのですが、いまキーナンは大会にも姿を見せてないじゃないですか。だからなかなか来る機会がなくて。
キーナン:あーそうだね。いまはもう自分の試合には興味がないし、アスリートでいることに疲れてしまったんだよ。いまフォーカスしているのはジムのことと、生徒たちのことだ。ジムでの指導はそんなに多くないけど、創設者の1人としてマネージメントに多くの時間を割いているよ。
──スケジュールを見たらキーナンのクラスは日曜日の1コマだけでした。なのでジムでも会えないと思ってたから、いたのでびっくりしました。でも練習や指導ではなくチェスしてたから、さらに驚いたんですが(笑)
キーナン:メインインストラクターはギがアンドリスで、ノーギがスローンが担当している。その他にも何人かいて持ち回りでクラスをやっているんだ。ここは私とスローンで立ち上げて、そこにアンドリスが加わった形だね。確かにクラスの指導は少ないけど、指導からリタイアしたわけじゃないから、こうやってジムにいるし、週に何度かは指導もしている。
──もう選手としたはリタイアしたんでしょうか?
キーナン:完全にリタイアした、とは明言しないけど、最後の試合は2020年か2021年だったと思う。その後にCOVIDがあって大変な時期があって世の中の全てが変わってしまった。そのときに自分自身のライフスタイルも変わったんだよね。
──最後の試合はいつでしたか?
キーナン:ギの大会に出たのは2020年のヨーロピアンだね。優勝できなかった大会だ。
──オープンクラスの決勝戦でフェリッペ・アンドリュー に三角絞めでタップしたんですよね。あれはフローのライブで見ていたから覚えています。驚きました。
キーナン:ああ、そうだね。その後にノーギでWNOに出ているけど、そこからフェードアウトしたんだ。何がきっかけ、ってのはないんだけど、いまは子供も2人いるし、ジムとファミリーで忙しいから自分の練習にまで時間は割けないんだよね。
──子供が2人もいるんですね。知らなかったです。
キーナン:ああ、そうなんだよ。毎日子守で大変だけど楽しいよ。前は選手として自分のことだけを考えていればよかったんだけど家族を持ったいまはそうはいかない。大会出場やスーパーファイトが決まったら、その試合に向けて全力で準備しなければならないし、練習してるだけだから収入も多くない。スーパーファイトはファイトマネーがあるけど、普通のトーナメントは参加費を払っての出場だし、賞金が出る大会もほとんどないし。スーパーファイトは勝つとウィンボーナスあるけど、それを獲得できるかどうかは半々だから、家族の命運をその勝敗に賭けるワケにはいかないよ。だから選手としてはセミリタイアしてジムの運営を安定させるべくマネージメントに専念してるってワケさ。
──そうだったんですね。COVIDのときに選手としてのキャリアはほぼ終わっていたんですね。
キーナン:このジムをスタートしたのはCOVIDの前の2019年で、ATOSをキックアウトされたときだった。それからジムを出し、結婚して、子供ができて、たくさんの生徒たちを抱えて、となると、自分自身のことは二の次になってしまうよね。でもいまはこのライフスタイルが気に入ってるし、ハッピーだから問題ないよ。
──ここはブラジリアン柔術じゃなくてアメリカン柔術ってなってますけど、なんでですか?
キーナン:柔術はいろいろあるよね。ブラジリアン柔術もいろんなスタイルあるし、日本のトラディショナルな柔術も柔術の1つだし。だからアメリカン柔術ってのを作って標榜している。アメリカン柔術はブラジリアン柔術より自由でカジュアルな感じといったところかな?クラスに入るのもインストラクターの許可を待たないといけないとか、水を飲むのもトイレに行くのもインストラクターに確認してから、というのは煩わしいだろ?ウチはそういうのはまったくない。クラスも途中参加OKだし、途中で帰るのもOKだ。クラス終わってからテクニックの質問にも時間が許す限り対応するようにしている。普通のジムなら、個人的な質問はプライベートレッスンで受け付ける、となるだろうけどね。
──ブラジリアン柔術のジムは世界中にあるけど、自分が知る限り、アメリカン柔術のジムはここだけだと思います。
キーナン:まーアメリカン柔術ってワードは前からあったし、また他にもできるかもしれないね。
──選手として現役時代はワームガードやラペラガードなど多彩なテクニックを考案して、そういった技術はいまも柔術シーンに残っています。これこそあなたが残した大きな功績だと思います。
キーナン:ありがとう。またいつかワームやラペラみたいな革新的なテクニックを世に出せたらいいね。
──日本ではラペラガードの第一人者として知られているのは、かつて同じサンディエゴに住んでいたイゴール・タナベです。イゴールはラペラガードをテーマにしたセミナーやったりしてますが、自身のラペラガードスタイルの元になったのはあなたの教則だったと公言しています。
キーナン:それは嬉しいね。イゴールのことはよく覚えているよ。知り合った当時はまだ色帯だったけど、その後の活躍は目にしている。ワームガードを日本で広めてくれてありがとうと言いたいね(笑)。
サンディエゴにあるリージョンAJJはBJJ=ブラジリアン柔術ではなくAJJ=アメリカン柔術を標榜している。世界的に見てもレアなジムだ。
巨大なジムが点在するサンディエゴにおいても最大規模のマットスペースがあり、日曜日のオープンマットには100人もの参加者で賑わうという。
キーナン・コーネリアスは現役時代にラペラを使った革新的なガード「ワームガード」を考案し、現在も広く使われている。