隻腕のパラ柔術家、重水浩次が最後のワールドマスター挑戦へ
隻腕のパラ柔術家、重水浩次が最後のワールドマスター挑戦へ
IBJJF WORLD MASTER 2024
はじめまして。
鹿児島でブラジリアン柔術をやっています、重水浩次といいます。
僕は出産時に神経が圧迫されて起こる『分娩麻痺』という障害で、生まれた時から左腕を自由に動かすことが出来ません。
そんな人生において35歳の時にブラジリアン柔術に出会い、弱いながらも続けていたら45歳の時に『パラ柔術』という障害者のための柔術があるのを知りました。
そこで2017年4月に初めてUAEアブダビで開催された『Abu Dhabi WORLD PARA JIU JITSU』に日本代表として出場させていただき、幸運にも優勝!
初代パラ柔術世界チャンピオンになることが出来ました。
そんな僕の新たな夢は、まだ誰も成し遂げたことがない『パラ柔術とワールドマスターの、W世界チャンピオン』です。
『障害者が健常者の世界選手権で勝てるわけがない』そんな声もチラホラ耳にしましたが、子供の頃からヒーロー好き、映画好きな僕は『これでワールドマスターでチャンピオンになったら、ヒーローだなぁ~映画みたいなストーリーだなぁ~、たぶん自分なら出来るな!』と、身の程知らずな性格も手伝って、パラアスリートとして所属している株式会社メルカリにも相談して、初めてワールドマスターにチャレンジしたのが、2022年のことでした。
2022年8月、羽田からLAまで約10時間のフライト、そしてLAからラスベガスまで約5時間のドライブで、夢のワールドマスターのマットに立っていた時間は、1~2分だけ・・・外掛けによる反則負け。
しかし"反則負け"という結果以上に、大会のレベルの高さ、自分の実力の足りなさを実感した大会でした。
ワールドマスター初参戦は外掛け反則の一発DQ
当然このままでは終われない。
一年間、リベンジを目標に練習してきて、再度挑んだ2023年のラスベガス。
三人トーナメントで、初戦は2-2 アドバン0-1で負け。
敗者復活戦でも0-0からレフェリー判定で負け。
確かに2022年よりは善戦したかもしれませんが、"勝つためには何かが足りない"その現実を思い知らされた2022年大会でした。
3人トーナメントの巴戦で2連敗も負けメダルで3位入賞
そして2024年。
『三度目の正直』か?
『二度あることは三度ある』か?
RIZINでの朝倉未来vs平本蓮のように"負けたら引退します"ではないですが、この3回目を最後のワールドマスター挑戦と決めてラスベガスにやってきました。
昨年の11月に16年間もの間、鹿児島で練習していた所属道場を退会して移籍して、練習環境を変えてきました。
さらに今回は敬愛する"アジアNo.1柔術ライター"橋本欽也さんに相談して同行させていただき、早めにラスベガス入りして、ラスベガスでも練習出来るジムにも連れて行っていただき、体調も体重調整も完璧、過去2大会に比べて、最高の出来です。
LAから5時間のドライブでラスベガス入り
大会2日前ですでに1kgアンダーで減量もばっちり
ラスベガスの老舗ジム、セルジオ・ペーニャのジムで軽く練習
ノーギクラスへの参加だったが試合に備えてギを着てスパー
同じくワールドマスター参戦のフランス人の方とも練習し激励される
先日、パリオリンピックが終了しましたが、世界マスター柔術選手権は、マスター柔術家にとってのオリンピック!
レッスルマニア!ワールドシリーズ!
とにかく、会場に入って、"WORLD MASTER"の文字を見て、20面以上あるマットを目の当たりにすると、少年の気持ちでワクワクします。
ブラジリアン柔術の楽しみ方は、無限にあります。
その中の一つとして、お金の調整をして、仕事の調整をして、家族に相談して、何よりも世界チャンピオンを目標に日々練習を積み重ねてラスベガスにやってくる。
ワールドマスターに挑戦する。
マスターズの青春です。
<続く>
重水浩次(しげみす・こうじ)
トラスト柔術アカデミー所属
1972年8/22生まれ・鹿児島県出身
163cm 58kg
㈱メルカリ所属のメルカリアスリート