早川光由に訊く餓狼伝「イマナリロールは飛んで逃げる」
早川光由に訊く餓狼伝「イマナリロールは飛んで逃げる」
餓狼伝: The Way of the Lone Wolf コラボインタビュー
5月より、Netflixで世界独占配信がスタートした「餓狼伝: The Way of the Lone Wolf」が絶賛公開中だ。
夢枕獏氏の格闘小説「餓狼伝」をベースに、"竹宮流"の使い手・藤巻十三を主人公に据えたオリジナルストーリーとなっている同作は、武尊や鶴屋怜、ホベルト・サトシ・ソウザといった超一流ファイターの動きを撮影し、アニメーションに反映したことでも話題になっている。
Jiu Jitsu NERDでは、「餓狼伝」スペシャルコラボインタビューとして、作中のキャラクター達と同様、飽くなき強さを追い求める格闘家や武道家らにインタビューを行っている。
第三弾となる今回は、トライフォース柔術アカデミー代表・早川光由氏にご登場頂いた。
「技のオモチャ箱」と呼ばれ、国内屈指のブラジリアン柔術アカデミーの一つ、トライフォースの技術体系を作り上げた早川氏の目に、「餓狼伝」の戦いやアニメーションはどのように映ったのか――。
――今回、Jiu Jitsu NERD的には一番出て欲しかった、現代の達人と言っても過言ではない、トライフォース柔術アカデミーの総代表、早川光由先生の登場です。早速ですが、餓狼伝はご存じでしたか?
早川:もちろん存じてました。しかし色んな格闘技の漫画や小説は読んできたのですが、実は餓狼伝だけ読んだことはありませんでした。いつかまとめて読んでみたいなと思っていたのですが…。
――では、今回Netflixで観てどうでしたか?
早川:藤巻十三、竹宮流。今回は餓狼伝のスピンオフ的な物語ですよね。久々に格闘技アニメを見たなと。色んな流派の格闘技が出てきたんですが、技術的には最近のモノを使ってることが面白いなと感じました。
――イマナリロールとかも出てきますもんね。
早川:それが武術の技としてあって面白いなと(笑)。
――劇中で気になったキャラはいましたか?
早川:姫川勉は、背景がわからなかったので気になりました。
――餓狼伝は、路上での戦いであったり、異種格闘技戦が世界観にあります。早川先生はそういったことを想定したりしていますか?
早川:今、その質問されて考えてみると、そんなに考えてないかも知れないです。もちろん我々、柔術第一世代はそのようなものを想定する練習もしてました。しかしこれほど長く、競技柔術の専門家として過ごしていると、ほとんど考えなくなってしまいました。
――なるほど。
早川:もちろん、ストリートの中で柔術を駆使してサバイブするって意味では、セルフディフェンスは意識してますし、今隔月で、トライフォース内でセルフディフェンスセミナーもやっております。個人的にはそういったものは続けていきたいと思っております。
――やはり武道家的な発想もお持ちですね。
早川:競技柔術のことだけを考えておけば良いのですが、やっぱり路上での戦いなども想定はしておきたいという気持ちはありますね。
――では、現在、芝本幸司選手、澤田伸大選手など世界で戦う選手の指導者としては、そういった戦いの想定はするべきですか?
早川:それは難しいですね。競技というのはやっぱりルールのことですので、ルール内で起こること以外のことは考える必要はないかと。その競技でトップになるためには、必要がないことを考えない方が無駄がないのではと思います。
――劇中のバトルシーンはどうでした?今作は、実際のファイターの動きを撮影しアニメに描き起こす手法を採用しております。
早川:やたらリアリティーがあるなと思ってたら、そういうことなんですね。
――藤巻十三の「虎王」はどうでしたか?
早川:基本、古武術などは、飛んだりすると無防備になるので、そういう発想には中々ならないと思います。竹宮流がどのくらい歴史がある流派かわからないんですが。
――もし早川先生が、餓狼伝の中で色んなファイターと戦うとしたらどういった戦い方をしますか?
早川:基本一対一の戦いなら、ブラジリアン柔術はかなり有効だと思います。ですがこのような戦いでは、相手の力量を見誤ると命取りになります。相手の力量を見極める時間や距離が欲しいですね。打撃がこちらに利があると判断すれば、積極的に打撃も使うと思いますし、相手が打撃に利があると思いえば、早めにクリンチして寝かすことが大事だと思います。
――そのような発想について、誰か参考にしてる武道家などはおりますか?
早川:日本的な武道家ではないかも知れませんが、ヒクソン・グレイシーとホイス・グレイシーの二人しかいませんね。
――二人のどのような部分に感銘を受けましたか?
早川:戦い方にブレがないことです。グレイシー柔術の武器、自分の力量を前提に戦うことにブレがない。そこが強さなのかと。自分がずっとやってきたグレイシー柔術への信頼なのかと。
――今回は貴重なお話をありがとうございました。最後の質問です。もし相手がイマナリロールを仕掛けてきたらどう対応しますか?
早川:僕は飛んだりする動きが得意なので、瞬間的に上に飛んで、その場から消えるような動きをすると思います。
相手が足に絡みつく前に、そこから離脱して、絶対付き合わないで全拒否です(笑)。指導者を長くやってると、相手の技を受けて流すということは多々あるのですが、私は相手のフィールドに全く付き合わないという動きも得意なんです。
――その攻防は実際にとても見てみたいです!本日はありがとうございました!